富山大学COC+関連地域課題解決科目講義レポート

授業科目名:経済学部「地域再生論」

開講学期曜限:2017年前期・金曜5限 7月14日

場 所: 経済学部209講義室第
14回 地域づくりの実践に向けて④ 産学官金連携による地域再生への挑戦② 魚津三太郎塾 「地域課題解決をビジネスで」
ゲストスピーカー:魚津市役所企画総務部企画政策課地域資源推進班 前田久則 氏 ・魚津三太郎倶楽部 島澤 達也 氏

魚津三太郎塾は、富山大学地域再生塾行政人コース(2009~2010年度実施:魚津市職員15人参加)の中で提案された事業で、将来の魚津を担う地域産業人を育成することを目指して2011年度からスタートしました。
講義では、魚津市における同塾の意義、塾生・修了生の活躍、そして修了生が運営する2017年4月にオープンしたコワーキングスペース「マチコ」などについて理解を深めました。  

 
魚津市の紹介と三太郎塾について
前田久則氏

魚津市は平野がほとんどなく、標高差は2,415メートル、奥行きはわずか25キロ。水の流れが一つのまちで完結する世界でも珍しい地形的な特徴がある。「魚津の三大奇観」として蜃気楼や魚津埋没林、ホタルイカ群遊海面が挙げられる。
 魚津三太郎塾にはテーマとなっているキーワードが4つある。
①環境ビジネス(魚津の水循環)
②社会的課題(ソーシャルビジネス)
③地域的課題(コミュニティービジネス)
④共通価値の創造(CSV)

 同塾は社会人を対象としたビジネス塾で、地域資源を活用し、地域の課題を企業の課題としてとらえ、企業の発展を図るケーススタディを実施することによって将来の産業界を含む地域リーダーの育成を目指している。
 塾生にいつも話していることが4つある。①何をすれば自分の企業が生き残れるか?②自社の強み、自身の特技を生かす③自社のある地域を知る④将来の魚津地域をイメージして、皆さんの企業はどのレベルを目指すか?……これらを常に意識して講義や討論に臨んでほしいと伝えている。
 参加者は企業の後継者や創業志望者が多い。塾生にはまず、「自分の会社で次は何をするか」と聞くことにしている。塾の狙いは、地域課題の解決をビジネスで実現することであり、起業・第2創業の手助けが目的。金融機関なども協力してもらっている。単なるお付き合いではなく、協力者にもメリットが生まれるよう、地域貢献の方法を考えている。
 現在は第6期がスタートするところだ。修了生は48人おり、30代が中心で、税理士、干物屋、料理屋など業種はさまざまだ。修了生の活躍をいくつか紹介する。
・印刷会社:印刷物の減少という企業課題、間伐の計画的な実施という地域課題を解決するため、間伐が進むような紙の利用方法を開発した。
・食品会社:地域の食文化伝承という企業課題、自然環境保全という地域課題を解決するため、看板商品に間伐材を活用したスティックを添えた。
・飲食店:売り上げの低迷という企業課題、豊かな自然環境PRという地域課題を解決するため、魚津の海産物を使ったどんぶりを開発。
 いずれも、環境と経済を両立した内容である。北日本新聞で「ウマイ!うおづ」というキャンペーンを実施したほか、16年にはカタログギフト「おつかいもん魚津」を作成した。いずれも魚津特産品のブランディングと次世代への継承などがキーワードになっている。2015年には富山大学生と連携して、ワークショップを開催。
 魚津三太郎塾を通じて感じるのは、企業課題、地域課題が意外に整理できていないということ。水循環、少子化、空き家活用などについて、行政が何かやろうとすると、すぐポストが必要になる。しかし、ビジネスとしてやれば長続きするだろう。修了生は市内の中学校へ出向き、講義しているが、中学生は意外に地域のことを知らず、残念に思う。富山大学と魚津市の連携事業として委嘱している「うおづ地域研究員」には、課題を提案してもらい、解決策を探るため、もっと地域に入って活動してほしいと考えている。

コワーキングスペース「マチコ(machi-co)」について
島澤達也氏(魚津三太郎塾三期修了生)

 私は有限会社COM-POSTの代表を務めながら、魚津三太郎倶楽部代表、コワーキングスペース「マチコ」を運営している。魚津三太郎倶楽部は、同塾の修了生で構成され、魚津水環境のPRや商品開発を通じて地域の活性化を目指す活動を行っている。  コワーキングスペース「マチコ」について紹介したい。  地域活性化のためには事業者を作らないといけないが、いきなり商売をやりたいと銀行に行っても、資金を貸してもらえない。スタートアップスペースが必要になるため、デスク、コピー、FAX、ネット環境が揃った環境=コワーキングスペース「マチコ」を提供している。「マチコ」は、すでに起業している人との交流の場ともなり、事業者同士が新たなビジネスを考える拠点ともなる。

[マチコの役割]
①創業者支援
コワーキングスペース
施設の活用と相談者へ情報の提供
②交流拠点
レンタルスペース・イベント、運営、講演会開催など
情報交流によるビジネスマッチング
③新規事業の創造
学生との連携による事業
ビジネスプランの創造と地域課題の共有


 コワーキングスペースの活動が活発になった背景としては、グローバル化を進めてきたメーカーがリーマンショックにより雇用を縮小、起業家やフリーランスが増大し、情報を共有する必要が生じてきた。ICTを活用したグローバル化が地域にも展開され、SNNSを活用したコミュニケーションが生まれた。新しいビジネスは常に生まれており、対応する地域づくりを進めねばならない。今後、魚津三太郎倶楽部は各事業所の強みを生かして、シェアリングエコノミーへの取り組みや、新たな販路の開拓へ身軽に対応する必要がある。。

学生との質疑応答、学生の意見発表など
 マチコの話を聞いて,学生の40%が「面白そう」、37%が「見学してみたい」、12%が「利用してみたい」との反応だった。以下に、学生とゲストスピーカーとの質疑応答・意見発表について紹介する。
学生1:魚津市のことは知っていても取り組みは知らなかった。いろいろ進んでいると思った。

前田氏:ぜひ、マチコをのぞいてみてほしい。

学生2:企業と地域の課題をマッチングさせるのは難しいイメージがある。

前田氏
:企業の課題があるということは、そこにニーズがあるということ。マッチさせれば、地域に必要とされるはず。その視点が必要だ ろう。

学生3:蜃気楼は見たことがないが、魚津はいい所だと思う。マチコの存在は知らなかったが、塾生たちの活躍にもすごく興味がある

前田氏:「マチコ」の運営は塾生の中では珍しい例だ。塾生は楽しんで魚津で生活している。中学生の前でも楽しく話をしてくれる。魚津に住んでくれとまではいわないが、関わってくれれば豊かな人生を過ごせるのではないかと思う。
写真説明


①学生を前に講演する前田さん




②魚津三太郎塾について熱く語る島澤さん